腱鞘炎は指だけ触れても治せない
腱鞘炎というと、多くの方が「手首を使いすぎたから痛くなるもの」とイメージします。確かに、手首や指の使い過ぎは一つの要因です。
しかし実際の施術現場では、手首だけをケアしても改善が長続きしないケースがとても多くあります。理由は、腱鞘炎の負担が「手首だけで完結していない」からです。
手の腱は前腕から続き、前腕は肘、上腕、肩、そして胸郭(胸まわりの骨格と筋肉)へと連動しています。この“つながり”のどこかに滑走不全や動きの制限があると、末端である手首に過剰な負担が集中します。
とくに胸郭は、腕の動きの“土台”とも言える場所で、ここが硬くなると肩がすぼみ、前腕の筋が引っ張られ、最終的に手首の腱にストレスがかかる仕組みになっています。
例えば、胸郭がうまく動かない人は、呼吸が浅くなり、肩や首に力が入りやすい傾向があります。この状態が続くと、手を使うたびに腕全体が緊張し、手首が常に負担を受け続けてしまうのです。
逆に胸郭を緩めて呼吸が深くなると、肩が自然に開き、腕の緊張が抜けていきます。その結果、手首だけに頼っていた動きが分散され、腱へのストレスが大きく減ります。
実際に、腱鞘炎で来院される方の多くは胸まわりの筋肉が固く、肩の可動域も狭いことがよくあります。
胸郭の動きが改善すると、「手首を触っていないのに痛みが楽になってきた」という声も珍しくありません。
それほど胸郭は、腕や手首の動作と深く関係しているのです。
腱鞘炎は“手首の問題”に見えて、実は“身体全体のバランスの問題”。痛む部分だけをケアするのではなく、胸郭という土台から整えることで、再発しにくい根本改善を目指すことができます



