女性と子供のための整骨院

高齢者の曲がった背中は整体で治る?「治す」だけではない高齢者への施術の考え方

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「曲がってしまった背中を、まっすぐにしてほしい。」

高齢の患者様を施術していると、このようなご相談をいただくことがあります。

先日、当院にも80代の患者様が来院されました。

この方は過去に腰椎の圧迫骨折を経験されており、さらに膝蓋骨が脱臼しやすかったことから、膝の手術も受けられています。

現在は背中の丸みがかなり強く、立っている時も歩いている時も、身体が前へ傾いたような姿勢になっています。

患者様としては、

「できれば、この背中をもう一度まっすぐにしたい」

という希望を持っていらっしゃいました。

しかし身体を確認したうえで、私は、

「完全にまっすぐな背骨へ戻すことは難しいです」

とお伝えしました。

決して諦めてもらうために言ったわけではありません。

むしろ、その方の身体にとって本当に目指すべきゴールを明確にするためです。

「姿勢が悪い」と「骨が変形している」は同じではありません

一般的に「猫背」と呼ばれている姿勢でも、その原因は一人ひとり異なります。

例えば、

筋肉が硬くなっている。

胸椎の動きが悪くなっている。

股関節が伸びにくくなっている。

長年の生活習慣によって前かがみになっている。

このような要因によって背中が丸く見えているのであれば、身体の動きを改善することで姿勢が変化する余地があります。

一方で、圧迫骨折などによって椎体そのものの形が変わっている場合は話が異なります。

この場合、単純な筋肉の硬さだけで姿勢が崩れているわけではありません。

身体を支えている骨そのものに構造的な変化が起きているからです。

その骨を整体や整骨院の施術によって元の形に戻すことはできません。

圧迫骨折が起こると、なぜ背中が丸くなるのでしょうか?

背骨は「椎骨」という骨が積み重なることで構成されています。

そして、その前方部分にある大きな部分を「椎体」と呼びます。

骨粗鬆症などによって骨が弱くなった状態で圧迫骨折が起こると、この椎体がつぶれ、くさび形に変形することがあります。

一つだけでなく複数の椎体にこのような変化が起これば、背骨全体の後弯が強くなり、いわゆる「背中が丸くなった状態」が目立つようになることがあります。

この状態を筋肉だけの問題として、

「硬いところを緩めればまっすぐになる」

と考えるのは無理があります。

骨の構造そのものが変化している以上、若い頃と同じ背骨へ戻すことを目標にするのは現実的ではありません。

では、整体を受けても意味がないのでしょうか?

ここが今回最もお伝えしたいところです。

骨の変形を元に戻せないことと、施術でできることがないことは全く別です。

高齢の方への施術では、若い方とは少し違った考え方が必要になります。

例えば、

今残されている関節の動きを維持する。

硬くなっている筋肉の緊張を和らげる。

股関節や肩関節を動かしやすくする。

立ち上がりや歩行を行いやすくする。

痛みを軽減する。

日常生活で身体を動かす機会を維持する。

こうした部分には、まだ十分に取り組める可能性があります。

背骨をまっすぐにすることだけが施術の目的ではないのです。

「変形」と「痛み」も分けて考える必要があります

もう一つ大切なのが、

「変形しているから必ず痛い」

とも限らないということです。

骨の形そのものを元に戻すことはできなくても、その周囲には筋肉や筋膜、関節、神経などさまざまな組織があります。

身体が前へ傾けば、その姿勢を支えるために一部の筋肉が過剰に働くこともあります。

さらに、背骨が動きにくくなれば、その分を股関節や膝など別の関節で補わなければならなくなることもあります。

こうした二次的な負担に対してアプローチすることで、

「背中は曲がったままだけれど歩きやすくなった」

「姿勢そのものは大きく変わらなくても身体が楽になった」

という変化を目指すことはできます。

ここを混同しないことが非常に重要です。

高齢者の施術では「改善」の意味が変わってきます

若い方であれば、

痛みをなくす。

関節可動域を大きくする。

スポーツへ復帰する。

といったことが施術の目標になることがあります。

しかし、80代、90代と年齢を重ねていけば、必ずしも「完全に元通りにすること」だけが正解ではありません。

例えば、

一人でトイレへ行ける。

自分で椅子から立ち上がれる。

近所まで歩いて買い物へ行ける。

家族と旅行へ行ける。

転倒せずに生活できる。

こうした能力をできるだけ長く維持することも、その方にとっては非常に大きな意味を持ちます。

施術によって劇的に身体を変えることだけが「改善」ではありません。

今できていることを、半年後、1年後もできるだけ続けられるようにする。

これも高齢者の身体を診るうえでは、とても大切な目標です。

無理に背筋を伸ばすことが逆効果になる場合もあります

背中が丸くなっている方に、

「もっと胸を張ってください」

「背筋を伸ばしてください」

と指導することがあります。

しかし、構造的な変形が強い方に対して、無理に若い頃のような姿勢を取らせることが必ずしも良いとは限りません。

背骨自体の形が変化しているのに、力だけでまっすぐにしようとすれば、腰や首、股関節など別の場所に負担をかけてしまう可能性があります。

だからこそ、

「理想的な姿勢に近づけること」

だけではなく、

「現在の身体の状態で、いかに無理なく動けるようにするか」

という視点も必要になります。

当院では「できないこと」も正直にお伝えします

整体や整骨院へ行けば、

「骨盤の歪みが治る」

「背骨がまっすぐになる」

「何歳でも姿勢は元通りになる」

そんなイメージを持たれている方もいらっしゃるかもしれません。

しかし、身体には改善できる部分と、構造的に元へ戻すことが難しい部分があります。

骨そのものが大きく変形しているのであれば、それを施術によって元の形へ戻すことはできません。

だからこそ当院では、できないことまで「治ります」とお伝えすることはありません。

一方で、

「変形しているから、もう何をしても意味がない」

とも考えません。

変えられない部分は受け入れる。

そして、まだ変えられる部分を探す。

筋肉なのか。

関節なのか。

歩き方なのか。

身体の使い方なのか。

そこを見極めながら、その方がこれからも生活しやすい身体をつくることを目指します。

高齢になったからこそ「維持する」という施術が重要になります

年齢を重ねると、身体にはさまざまな変化が起こります。

骨の変形。

筋力の低下。

関節可動域の低下。

バランス能力の低下。

これらをすべて若い頃の状態へ戻すことは現実的ではありません。

しかし、

今歩けている状態を守る。

今立ち上がれている能力を守る。

今自分でできている生活を守る。

そのために身体を整えていくことには、大きな意味があります。

今回の患者様にも、

「背骨を完全にまっすぐにすることを目標にするのではなく、今ある身体の機能をできるだけ維持して、これ以上生活に支障が出ない身体を目指しましょう」

とお伝えしました。

何でも治すことだけが施術ではありません。

治せないものを正しく見極め、その中で何ができるのかを考えること。

そして、

その方が自分の身体で生活できる時間を、できるだけ長く守ること。

高齢者に対する施術では、こうした考え方も非常に大切だと当院では考えています。