身体の痛みを改善するために筋トレは必要?「鍛える前に使える身体をつくる」という考え方
「腰が痛いから腹筋を鍛えた方がいい」
「膝が痛いから太ももの筋肉をつけなければいけない」
「最近、足に力が入りにくいから筋力が落ちたのかもしれない」
身体に痛みや不調が出ると、このように考える方は非常に多いと思います。
もちろん、筋力トレーニングは健康維持にとって大切です。
年齢を重ねることで筋力が低下している方や、運動不足の方、スポーツを行っている方など、積極的に筋力を高めた方がよいケースもあります。
しかし、身体の痛みを改善するという目的で考えた場合、
「痛い=筋肉が足りない」
とは限りません。
実際には、筋肉そのものは十分に存在しているにもかかわらず、その筋肉をうまく使えていないというケースも少なくないのです。
「筋力がない」と「筋力を発揮できない」は違います
例えば、足に力が入りにくい方がいたとします。
立ち上がるのが大変。
階段がつらい。
歩いていると踏ん張れない。
このような症状があると、多くの方は、
「筋肉が落ちたからだ」
と考えます。
しかし身体の状態を確認すると、必ずしも筋肉量そのものが大きく減少しているとは限りません。
関節の動きが悪くなっている。
筋肉が必要以上に緊張している。
痛みによって身体が無意識に力を出しにくくしている。
神経や筋肉の協調がうまくいっていない。
こうした状態でも、身体は「力が入らない」と感じます。
つまり、
筋肉がないのではなく、持っている筋肉の能力を十分に発揮できていない
という状態が存在するのです。
筋肉は「量」だけではなく「使い方」が重要です
身体を動かす時、一つの筋肉だけが単独で働いているわけではありません。
歩く。
立ち上がる。
しゃがむ。
階段を上る。
こうした何気ない動作でも、複数の筋肉や関節がタイミングよく連動しています。
例えば立ち上がる動作であれば、
足首。
膝。
股関節。
骨盤。
体幹。
これらが協調して初めて、スムーズに立ち上がることができます。
ところが、股関節が硬くなっていたり、足首が十分に曲がらなかったりすると、本来使うべき筋肉をうまく利用できなくなります。
すると身体は別の筋肉で補おうとします。
その結果、
太ももばかりが疲れる。
腰へ負担が集中する。
膝が痛くなる。
肩や首に余計な力が入る。
といったことが起こる場合があります。
だからこそ、単純に筋肉量を増やすだけではなく、身体全体を効率よく使える状態にすることが大切なのです。
「弱いから鍛える」だけでは解決しない場合があります
例えば、股関節が十分に動かない状態でスクワットを繰り返したらどうでしょうか。
本来であればお尻や股関節周囲の筋肉を使いたいのに、太ももの前側や腰ばかりに負担がかかることがあります。
そこで、
「筋力が足りないから、もっとスクワットをしよう」
と回数だけを増やしてしまえば、すでに負担が集中している場所をさらに酷使してしまう可能性があります。
これは腹筋運動でも同じです。
腰の反りが強く、股関節や腹部をうまく使えていない状態で腹筋運動を繰り返しても、思ったように腹部へ刺激が入らないことがあります。
つまり重要なのは、
「何回やるか」
よりも、
「その動きを正しく行える身体なのか」
ということです。
まず身体を動きやすい状態にする
当院では、痛みのある患者様に対して、最初から強い筋力トレーニングを行うことを前提にはしていません。
まず確認するのは、
関節が本来の範囲で動いているか。
筋肉が過度に緊張していないか。
左右差が大きくなっていないか。
痛みによって特定の動きを避けていないか。
必要な筋肉へ力を入れられているか。
といった部分です。
そして必要に応じて、
硬くなった筋肉を動きやすくする。
関節の可動性を改善する。
身体の緊張を減らす。
正しい動作を覚える。
そのうえで必要な運動を行います。
つまり、
施術と運動は対立するものではありません。
身体を動きやすく整え、その状態で必要な筋肉を使えるようにしていく。
この順番が大切だと考えています。
一般の方とアスリートでは目的が違います
競技スポーツを行うアスリートの場合は、より高い筋力や瞬発力、持久力などが必要になります。
そのため、競技能力を向上させるための筋力トレーニングは欠かせません。
一方で、一般の方が求めているものは、
痛みなく歩きたい。
仕事を楽にしたい。
子どもを抱っこしたい。
旅行へ行きたい。
階段を普通に上りたい。
といった日常生活であることが多いと思います。
その場合、必ずしも大きな筋肉をつける必要はありません。
今ある筋肉や関節を効率よく使い、日常生活に必要な力を発揮できることの方が重要になるケースもあります。
高齢者の場合は筋力トレーニングが必要なこともあります
もちろん、すべての患者様に「筋トレは必要ない」と言っているわけではありません。
特に高齢になると、加齢や活動量の低下によって筋肉量や筋力そのものが低下することがあります。
このような場合には、適切な運動や筋力トレーニングが非常に重要です。
だからこそ、
「筋トレが必要」
「筋トレは必要ない」
と一括りにするのではなく、
その方に本当に筋力が不足しているのか、それとも筋力を発揮できていないのかを見極めること
が大切なのです。
当院が大切にしているのは「鍛える前に使える身体へ」
身体に痛みがあると、
「もっと鍛えなければ」
と焦ってしまう方がいます。
しかし、身体がうまく動けない理由が筋力不足ではなく、関節の硬さや筋肉の過緊張、身体の使い方にあるのであれば、先にその問題を整えた方がよい場合があります。
動きにくい場所は動きやすくする。
過剰に緊張している筋肉は負担を減らす。
使えていない筋肉は使えるようにする。
そのうえで、必要な筋力をつけていく。
これが当院の考える身体づくりです。
まとめ
筋力トレーニングは非常に大切なものです。
しかし、身体の痛みや不調を改善するために、すべての方がまず筋肉を増やさなければならないわけではありません。
筋肉量が不足している人。
筋肉はあるけれど使えていない人。
関節の動きが悪い人。
痛みによって力を発揮できない人。
身体の状態は一人ひとり違います。
だからこそ、
「とりあえず筋トレ」ではなく、まず自分の身体に何が必要なのかを知ること。
そして、
「鍛える前に、使える身体をつくること。」
今ある筋肉や関節が本来の能力を発揮できる状態を整え、そのうえで必要なトレーニングを行う。
それが、身体の痛みや不調を改善し、長く動ける身体をつくるための大切な考え方だと当院では考えています。



