関節の「遊び」が身体にとって重要な理由とは?慢性的な痛みや動きづらさとの関係
「筋肉をほぐしても、またすぐに身体が硬くなる」
「ストレッチをしているのに、関節の動きがなかなか良くならない」
このようなお悩みを持つ方は少なくありません。
身体の不調というと、どうしても筋肉の硬さに目が向きやすいと思います。
もちろん筋肉の状態は非常に大切です。
しかし、身体をスムーズに動かすためには、筋肉だけではなく「関節そのものの動き」も重要です。
その中でも、特に見落とされやすいのが関節にあるわずかな「遊び」です。
関節の「遊び」とは何でしょうか?
ここでいう「遊び」とは、関節がグラグラしているという意味ではありません。
私たちの関節には、
曲げる。
伸ばす。
捻る。
といった大きな動きとは別に、関節の中で骨同士がほんのわずかに滑ったり、転がったりする動きがあります。
専門的には「副運動」や「関節内運動」などと呼ばれるものです。
この動きは非常に小さく、外から見てもほとんど分かりません。
しかし、関節が大きくスムーズに動くためには、この小さな動きが欠かせません。
膝は単純な蝶番ではありません
例えば膝を曲げる動作を考えてみましょう。
見た目には、膝が単純に折れ曲がっているように見えます。
しかし実際の関節の中では、太ももの骨とすねの骨がわずかに滑ったり、転がったりしながら動いています。
もしこの細かな動きが失われてしまうと、膝全体の曲げ伸ばしもスムーズに行いにくくなります。
これは膝だけではありません。
肩関節。
股関節。
足首。
背骨。
身体のさまざまな関節で、同じような細かな動きが起きています。
つまり、私たちが普段何気なく行っている大きな動作は、その裏側にある小さな関節運動によって支えられているのです。
関節の遊びが少なくなると何が起きるのでしょうか?
関節の動きは、
長時間同じ姿勢を続ける。
過去にケガをしている。
痛みをかばって長期間身体を動かしている。
運動量が低下している。
加齢などによって身体を動かす機会が減っている。
このようなさまざまな理由で小さくなることがあります。
すると、本来その関節で行うはずだった動きを、別の場所で補うようになります。
例えば足首が硬くなった場合。
しゃがむ時には、足首をしっかり曲げる必要があります。
ところが足首が十分に動かなければ、膝を内側へ入れたり、股関節や腰で姿勢を調整したりして、なんとかしゃがもうとします。
一回の動作では大きな問題にならなくても、毎日の歩行や階段、立ち座りのたびにこうした代償動作を繰り返せば、別の場所へ少しずつ負担が蓄積していく可能性があります。
背骨にも細かな動きがあります
背骨も同じです。
例えば胸椎が硬くなり、回旋しにくくなっている方がいたとします。
身体を振り向く時、本来であれば胸椎や股関節など複数の関節が協力して動きます。
しかし胸椎が十分に動かなければ、その分を首や腰で必要以上に補うことになります。
すると、
首が疲れやすい。
腰が張りやすい。
身体を捻ると痛い。
といった不調につながることがあります。
痛みが出ている場所だけを見ても原因が分からないことがあるのは、このように身体全体が連動して動いているからです。
関節の「遊び」が慢性痛のすべての原因ではありません
ここで大切なのは、
「関節の遊びがなくなれば必ず慢性痛になる」
ということではありません。
慢性的な痛みには、
筋肉。
神経。
関節。
姿勢。
生活習慣。
運動量。
睡眠。
ストレス。
過去のケガ。
など、さまざまな要素が関係します。
そのため、慢性痛を一つの原因だけで説明することはできません。
ただし、関節の動きが低下していることで別の場所へ負担が集中し、それが痛みの一因になっているケースはあります。
だからこそ、「痛いところを揉む」だけではなく、その周囲の関節が本来必要なだけ動いているかを確認することが重要なのです。
「柔らかければ良い」というわけでもありません
関節の遊びが大切と聞くと、
「では関節は柔らかければ柔らかいほど良いの?」
と思う方もいるかもしれません。
しかし、そういうわけではありません。
関節には「可動性」と同時に「安定性」も必要です。
関節が硬すぎれば動きにくくなります。
反対に、緩すぎれば関節が不安定になり、身体を支えにくくなります。
つまり理想は、
必要な方向へ、必要な範囲だけ動き、その位置を筋肉でしっかり支えられること
です。
柔軟性だけを追い求めるのではなく、動きと安定性のバランスを整えることが重要です。
捻挫と関節の動きについて
足首の捻挫を繰り返す方にも、関節の状態は重要です。
ただし、
「足首が硬いから捻挫する」
「遊びがあれば捻挫しない」
というほど単純ではありません。
捻挫には、
足首の可動性。
筋力。
バランス能力。
過去の捻挫歴。
関節の安定性。
足の着き方。
など、複数の要素が関係します。
大切なのは、関節が必要な範囲で動きながら、急な動きに対して筋肉が適切に反応できる状態をつくることです。
つまり、関節の「遊び」と筋肉の働きの両方が必要になります。
筋肉を揉むだけでは改善しない場合があります
身体が硬いと、
「筋肉が硬いから揉みほぐそう」
と考える方は多いと思います。
もちろん、筋肉の緊張を和らげることは大切です。
しかし、筋肉が柔らかくなっても、関節の中の動きが十分に戻っていなければ、身体全体の動作が思うように改善しない場合があります。
例えば、
ふくらはぎをしっかり揉んだのに足首が曲がらない。
太ももを緩めても膝が曲げにくい。
肩周囲をほぐしても腕が上がりにくい。
このような場合には、筋肉だけではなく関節の動きそのものを確認する必要があります。
当院では関節の細かな動きまで確認します
当院では、症状がある場所の筋肉だけを施術するのではなく、
足首。
膝。
股関節。
背骨。
肩関節。
など、それぞれの関節が本来必要な範囲で動いているかも確認します。
そして、
筋肉が硬いのか。
関節の動きが低下しているのか。
神経の滑走性が悪くなっているのか。
別の関節が動きを代償しているのか。
身体全体を見ながら原因を考えていきます。
大切なのは「大きく動くこと」だけではありません
関節の動きというと、
「前屈で床に手が届く」
「肩が180度上がる」
といった大きな可動域ばかりに目が向きがちです。
しかし、その大きな動きを支えているのは、関節の中で起きているほんのわずかな動きです。
その数mmにも満たない小さな動きが失われることで、身体全体の動作がぎこちなくなる場合があります。
身体にとって重要なのは、単純に柔らかいことではありません。
必要な場所が、必要な方向へ、必要なだけ動けること。
そして、その動きを筋肉がしっかり支えられること。
それが身体をスムーズに動かすための基本です。
筋肉をほぐしても症状を繰り返している方や、ストレッチをしても身体の動きが変わらない方は、一度「関節の動き」という視点から身体を確認してみてもよいかもしれません。
目に見えないほど小さな「関節の遊び」。
その小さな動きが、身体全体の動きやすさを支える大切な要素なのです。



